主題とは異なりますが、まず海神社の概要説明を行います。
海神社は底津綿津見神、中津綿津見神、上津綿津見神の三神を祀っており、社伝では
千八百年の歴史があり、神功皇后が三韓へ出兵帰途のとき、垂水沖で軍船が暴風雨に
見舞われたが、鎮静を祀ったところ、暴風雨がおさまり、無事に都へ帰れたというのが
鎮座の由来とい言われている。通常かいじんじゃという名前で呼ばれていますが
「綿津見(わたつみ)神社」という別名で呼ばれる場合もあります。
別称としては他に日向大明神、衣財田大明神、海(あま)神社、垂水(たるみ)神社。
神戸市垂水区を代表する神社である。
毎年10月10日より12日に行われる秋の例祭は垂水地区の布団太鼓の練りがあり
賑わいます。秋の例祭では船舶の安全を願い魚業発展を祈願する海上渡御と陸上での
神輿巡業もあります。
秋の例祭関連のブログ:2018年 海神社秋祭り
2017年 海神社の秋祭り
2016年 海神社秋祭りの情報
海神社の基本情報
住所:神戸市垂水区宮本町5-1 TEL:078-707-0188及び0189
御祭神:底津綿津見神、中津綿津見神、上津綿津見神
末社:蛭子神社、天神社、猿田彦社、稲荷社
主な年中行事:1月1日~15日頃 百燈明祈願神事
1月9日~11日 初ゑびす
1月10日 とんど祭
2月3日 節分祭
6月30日 夏越祭
7月海の日(第3月曜)を含む土日月 夏祭
8月13日~15日 海の幸みたま祭
10月10日~12日 秋祭
11月中 七五三神事
毎月 1日:月首祭 11日:月例祭 20日:海上安全祈願祭 戌の日:安産祈願
公式サイト:http://kaijinjya.main.jp/
上の写真は海神社の境内図 出典:海神社のリーフレット
さて、前置きが長くなりましたが本題の海神社の懸魚の話題に入っていきます。
懸魚(げぎょ)は、建物妻の破風(はふ)板の下部につけて棟木や桁の木口を隠す彫刻や
透彫りの飾り板のことです。 棟木や桁の木口を風雨から守るためにつけた板が装飾化した
ものと言われています。神社仏閣の屋根には必らず下がっています。
懸魚はその名前が示すように水を連想させるもので火に弱い木造の建物を火災から守るため、
火除けのまじないとして取り付けてあります。
破風の拝み(=合掌の合わせ目)の部分にあるものを本懸魚(おもげぎょ)、左右の下部の
桁を隠すための懸魚を降懸魚(くだりげぎょ)または桁隠し懸魚という。
本懸魚は別名で拝(おがみ)懸魚と呼ぶ場合もあります。
その他に,唐破風(からはふ)につけられる懸魚を兎の毛通(うのけとおし)と呼んでいます。
懸魚は形態の違いで次のようなものがあります。
下記サイトによる分類を転記。http://www.gegyo.sakura.ne.jp/index.html
・蕪(かぶら)懸魚
・猪目(いのめ)懸魚
・三ツ花(みつばな)懸魚
・梅鉢(うめばち)懸魚
・二重(にじゅう)懸魚
・彫(ほり)懸魚
・貝頭(かいかしら)懸魚
・雁股(かりまた)懸魚
・盾(たて)懸魚
・切(きり)懸魚
・結綿(ゆいわた)懸魚
具体的に海神社の懸魚を観ていきましょう。 撮影日:2019-9-6
上の写真は拝殿の遠景で懸魚のある位置を示しました。
上の写真は懸魚の部分の拡大部で蕪(かぶ)懸魚と言えます。
蕪懸魚は野菜の蕪(かぶ)の形状と似ているところから付いた呼称です。
また左右には鰭(ひれ)が付属しています。
また上部には六葉の飾りがついています。
上の写真は手水舎の蕪懸魚です。六葉飾りについて説明するために添付しました。
六葉(ろくよう)は懸魚の中心についている飾りです。
6枚の葉の形をした図柄から六葉と呼ばれています。
六角形のものが多いが、他に四角形、五角形、八角形のものや菊などの花弁をあしらった
図柄もあるが形にとらわれずに、すべてを総称して六葉と呼びます。
六葉の中心から出ている丸い棒を「樽の口(たるのくち)」、その根元にある菊の形を
「菊座(きくざ)」と呼びます。
上の2枚の写真は社務所の近遠景で猪目(いのめ)懸魚の例として取り上げました。
ハート型の模様の部分が猪目です。かたちが猪(イノシシ)の目に似ていることから
この名がつきました。
十二支を陰陽五行説で分類すると、亥(いのしし)は水を司る生物とされ、懸魚はその名から
水を連想させ、互いに火除けの意味合いを持ち広く猪目懸魚が採用されています。
上の写真は湊川神社神門の猪目懸魚です。
上の2枚の写真は本殿の近遠景です。
本懸魚と桁隠し懸魚(降懸魚)の例として添付しました。
上の写真は兎の毛通の一例を示しました。
出典:清水稔次著 現代実例社寺建築の細部意匠