神戸電鉄の情報誌SUZURAN 2020年夏号 Vol.128の駅からぶらり!with神戸親和女子大学
で神鉄道場駅・道場南口駅の周辺の紹介記事があり、この中に神戸電鉄の創業者
山脇延吉翁の頌徳碑について紹介されており2020年9月30日に訪問した。
当日、撮った写真を中心に紹介していきます。
上の2枚の写真は神戸電鉄の創業者 山脇延吉翁の頌徳碑の中近景
頌徳碑には次のように書かれています。
頌徳碑
故正六位勲五等功四級山脇延吉君ハ明治八年二月
有馬郡道場村ニ生レ東大ニ學ヒ日露戰役ニ從軍殊
勲ヲ奏シ歩兵大尉ニ任シ大正八年陸軍大演習ノ砌
御前講演ヲ拜命ス人袼髙潔德望世ニ髙ク縣會議長
縣農會長縣販賣購買組合聨合會長神有電鐵社長其
ノ他要職ニ就キ後帝國農會副會長ニ選任サル昭和
六年農業恐慌ニ際シ自力更生ヲ提唱 畏クモ上聞
ニ達スルノ光榮ヲ擔フ終始農政運動ニ心血ヲ注キ
全國ヲ講演行脚シ竟ニ根本的税制改革ヲ初メ幾多
重要政策ノ實現ヲ見タルハ君ノ努力ニ負フ所洵ニ
多大ナリ昭和四年藍綬褒章ヲ授ケラレ又軍事産業
縣政等ノ功勞者トシテ屢顯彰セラル紀元二千六百
年式典ニ當リ特ニ位二級ヲ進メラレ昭和十六年四
月病革ルヤ勲等ヲ陞叙サル寔ニ餘榮アリト謂フヘ
シ爰ニ有志相謀リ碑ヲ建テ永ク其ノ偉績ヲ傳フ
昭和十八年四月
陸軍大將正三位勲一等功一級男爵本庄繁題字
帝國農會長 從三位勲三等伯爵酒井忠正撰
山脇延吉氏(1875-1941)の死後2年経った昭和18年(1943)に
県農会や有馬郡町村会、神有電鉄などの出資と全国から集まった募金、さらに
帝国在郷軍人会有馬郡連合分会などの奉仕活動によって生家に近い道場川原駅
(現・神鉄道場駅)西隣に「山脇延吉翁頌徳碑」が建立された。
頌徳碑と書かれた題字揮毫は日露従軍時に上官だった予備役陸軍大将本庄繁、
撰文は帝国農会副会長就任時の農林大臣で当時帝国農会長だった伯爵酒井忠正
上の写真は山脇延吉氏(1875-1941)の写真です。
出典:三田ゆかりの50人 NPO法人 歴史文化財ネットワークさんだ Page39
神戸市北区道場町塩田に生まれ、鹿児島造士館を経て東大工科を二年で中退、一年志願兵で
日露戦争に従軍、有馬郡に帰郷してからは明治37年(1904)道場銀行頭取、有馬郡会議員
道場村長、県会議員に加えて有馬郡郷軍会長、有馬郡農会長、県畜連会長、県山林会長、
関西二府十七県農連会長、県販購連会長、帝農評議員、帝農農政委員、重要肥料委員、農林計画委員、
など主に農政関係の重要ポストをつとめ、当時、大正12年(1923)の関東大震災や昭和初期の恐慌で
疲弊していた農村の復興で自力更生を唱え農村の意識改革を図った。
自力更生は昭和7年(1932)7月20日、白根知事によって国に報告、国の農村振興の根本策となった。
県会議員としては明治40年(1907)初めて当選、大正8年(1919)に再選して7回当選しています。
道路の整備、河川の改善、天災復旧、農業・教育・医療の振興で業績が評価されています。
さらに、神戸電鉄開業関連の事蹟を中心に記載していきます。
[神戸電鉄開業前史]
明治39年(1906) 阪鶴鉄道(現在のJR福知山線)の国有化決定
当時、既に神崎駅(現在の尼崎駅)~新舞鶴駅(現在の東舞鶴)が開通していました。
福知山線を敷設した阪鶴鉄道の重役が箕面有馬電気軌道(現阪急電鉄)を計画
明治40年(1907) 日露戦争後の不況で株式暴落
小林一三が阪鶴鉄道の監査役となり阪鶴鉄道を清算後、
箕面有馬電気軌道の追加発起人となる。
箕面有馬電気軌道の創立総会
取締役/井上保次郎、松方幸次郎、志方勢七、藤本清兵衛 小林一三が専務代表取締役
明治43年(1910)箕面有馬電気軌道が開業 梅田-宝塚、石橋-箕面
大正3年(1914) 有馬鉄道株式会社を設立 山脇延吉が社長
大正4年(1915)4月16日 有馬鉄道が三田-有馬の約12kmが開業 同時に鉄道院が借り上げ
昭和18年(1943)7月1日の廃止まで国鉄有馬線として存続
関連ブログ:有馬鉄道(国鉄有馬線)の有馬駅
[神戸電鉄の設立から開業まで]
大正11年(1922)11月 山脇延吉他7名で有馬電鉄株式会社の名称で
上三条町-有馬温泉の鉄道敷設免許を申請
大正13年(1924)6月 社名を神戸有馬電気鉄道株式会社と改称し
起点駅を上三条町から湊川公園下に変更して鉄道敷設免許を申請受諾
大正15年(1926)3月 神戸有馬電気鉄道株式会社の正式設立
昭和3年(1928)11月 神戸-有馬口に神有電車が開業
12月 有馬口-三田までの鉄道も開通
[参照資料]
農政の先覚者帝農副会長山脇延吉氏 - 神戸大学 電子図書館システム
(神戸新聞 1939.11.8 (昭和14))
山脇延吉翁からの贈りもの 「神戸電鉄」誕生の物語 藤田裕彦著
https://concours.toshokan.or.jp/wp-content/uploads/contest-data/210006/
上の写真は山脇延吉翁が生涯唱えてきた「自力更生」と刻まれた石碑
上の写真は神戸市北区役所と道場町連合自治会が設置した現地説明板
山脇延吉翁の碑
神戸電鉄や有馬鉄道の創始者。県会議長、県農会長、帝国農会副会長を歴任し、
また治山治水にも尽力した。特筆すべきは、昭和恐慌で農民が苦しんだ時、政府には
意見書を出して救済費の計上と経済更生部の新設を実施させ、農民には自らが先頭
に立って「自力更生運動」の浸透をはかり、農村振興に一身を賭した事である。
神戸市北区役所・道場町連合自治会
上の2枚の写真は神鉄道場駅
上の写真は神鉄道場駅から撮った山脇延吉翁の頌徳碑
頌徳碑のある所在地住所の概略は神戸市北区鹿の子台北町1丁目1
所在地のGoo地図を添付しておきます。
地図に示された場所は正確ではないので神鉄道場駅より山脇延吉翁の頌徳碑に行く
経路について説明します。駅前から右手に駐車場がありますので駐車場の周囲を廻り
階段を下りたところにあります。